「ロアさん、この店にフリルの服を着た女の子はいませんでしたか」
ロウンはリンに聞こえないよう、小さな声でこう問う。
「フリルの服を着た女の子……? いえ、うちにはそんな子いなかった気がするんですが……」
ロアは眉を寄せ、首を傾げた。
「そう……ですか。すみません、レオ君を少し借りても?」
「あぁ、いいですよ。レオ!」
ロアは水遣りを続けているレオを呼びに行く。
と、レオは目を見開いてロウンを見つめ、足早にロウンに近づいた。
「すいませんでしたっ」
そして、レオは深々と頭を下げた。
その様子を、リンとライムが不思議そうに見つめている。
幸い、お客はいなかった。
「とりあえず、休憩室にどうぞ」
ロアはレオとロウンを休憩室に連れて行く。
休憩室で二人きりになったレオとロウンは、お互い向かい合うようにして座っていた。
レオは申し訳なくて下を向いたままになっている。
「やっぱり、無理だったか……」
ロウンはふぅっと息をついた。
「すいませんでした……もう少し早めに気付いていれば、リムは……あんな目に遭わなくて済んだかも知れません……」
「いや、君のせいじゃない。元はと言えば、過去の俺のせいなんだ」
「……それでも、傍にいながら俺はリムに何もしてやれなかった」
いつまでも申し訳なさ気に俯いているレオに、ロウンは優しく微笑んだ。
「存在が消えてしまったのなら、また存在を作ればいいだろう?」
「……え?」
ロウンは床に手と膝を付け、頭を深々と下げた。