「リンちゃん、お客さん」

「へ?」

店の出入り口に向かうと、サングラスをかけた父が立っていた。

サングラスは変装のためにつけているのだろうか……。

全く似合ってないんですけど。

「どうしたの?」

「これから仕事なんだ。まだ家に報道陣がいるから、お前は俺が帰るまで花屋で待ってろよ」

「え、うん。どれくらいになる?」

「分からない。もしかしたら夜中になるかも知れない。また、連絡するよ」

「あ、じゃあ、あんまり遅くなるようでしたら、僕がリンちゃんを送りますよ」

と、ロアはにっこりと笑ってこう言う。

「あぁ、ありがとう。助かるよ。気を付けて」

「はい」

「じゃ、お前は仕事に戻れ」

あたしはまるで野良猫のようにしっしっと、父に払われる。

「何でよ」

「いいから、あっち行ってろ」

と、仕舞いにはぎろりと睨まれた。

あたしはむっと脹れて渋々仕事に戻っていく。