「……レオ?」

そっと名前を呼んでみた。

レオは横目であたしを見るだけだ。

「振られちゃった?」

あたしがこう訊いた瞬間、レオはさっきのロアと同じように噴き出す。

「普通単刀直入に訊くかっ!?」

ガラガラ声であたしに突っ込みを入れるレオ。

怒ってなかったんだ。

と、あたしは安堵した。

「元気出しなよ!」

「俺は失恋なんかしてない」

レオは半眼であたしを見つめた。

「また強がっちゃって」

「本当に、強がりなんかじゃない。恋とかよりも大事な、もっと大切なものを俺は失ったんだ」

急にレオの表情が暗くなる。

あたしは心配になってレオの顔を覗き込んだ。

「成績? 大学の成績がまずいの?」

「そんなことより、もっと大事なものだ。人の命と同じくらいの重み。……俺は……消えていくあいつに……何も出来なかった」

あたしは俯くレオを、信じられないと言うような表情で見つめた。

「な、何言ってんの、レオ? 熱でもあるの……?」

「悪い……当分、そっとしててくれ。多分、三十分も経てばまた元に戻るから」

レオは寂しげな笑みを浮かべて、他人事のようにこう言った。

「う、うん……平気?」

「あぁ」

こくんと頷いて、また水遣りに戻っていくレオの背を、あたしは心配しながら見つめていた。

こんなレオは大学の成績が出たとき以来だった。

相当落ち込んでるな。

しばらくそっとしておこうと仕事に取り掛かり始めると、出入り口側からロアに呼ばれた。