「お帰りなさい、リンちゃん!」

花屋に入って、まずライムに飛びつかれた。

「ただいま!」

あたしはにっこり笑って答える。

と、ふいにレオと目が合った。

だが、レオは直ぐにあたしから視線を外した。

怒ってるのかな。

あたしがあんな言い方したから……。

「ロアさん、助けてくださって、ありがとうございました! もっと早く言いたかったんですけど……」

「あぁ、リンちゃん。全然、気にしなくていいよ。無事で何より」

ロアはにっと笑ってあたしの頭を撫でた。

「あの……レオ、怒ってます……?」

「ん、違うと思うよぉ? なんか、喉が嗄れちゃったみたい」

「喉が……?」

「そうそう、昨日はね、目なんか真っ赤になっちゃって、大変なことになってたんだから」

あたしは首を傾げ、花の水遣りをしているレオを見つめた。

「何かあったんですかね?」

「そうだねぇ……失恋とか?」

「失恋!?」

思わず大声になってしまう。

ロアはしっと右手の人差し指を立てた。

「四年間くらい惚れてた女の子に振られたみたい」

「よ、四年!? あららぁ……哀れな奴」

あたしがそう言うと、ロアはぶっと噴き出した。

必死で笑いを堪えているような表情を浮かべてる。

「まぁ……詳しいことは分からんけど」

「じゃ、直接訊いてみます」

「そう、気を付けて……って! リンちゃん! だめっ!」

あたしはロアの台詞を無視してレオに近づいて行った。