「俺は……忘れない」
リムはそんなレオを驚いたように見つめる。
「俺は、ずっと忘れないから。必ず、俺がもう一度お前を存在させてやる。だから、それまで待っててくれ」
レオの声は震えていた。その声を聞いた瞬間、レオが泣いているということにリムは気付く。
そして、自然と自分まで瞳から涙が零れてきていた。
レオの言葉が本当に嬉しくて、次から次へと涙が出てくる。
「……うんっ……お願い……ね……お……父……さんっ……」
リムは最後ににっこりと満面の笑みを浮かべて、静かに消えていった。
レオは空を抱くような格好になっている。
何もない。
さっきまで確かにあったリムの温もりも、リムが買ったであろうベッドなどの家具も、レオの頬を濡らしたリムの涙も、全てが存在を消した。
きっと、リムが消えた瞬間にリムと関わった家族以外の人間の記憶には、もう一欠けらもリムとの思い出は残っていないだろう。
レオはただ、自分の無力さに涙を流していた。
リムのために何も出来なかった自分が腹立たしくも思う。
だが、どんなに泣いても、喚いても、既に存在を消した甘ロリを着た少女の姿は戻って来ない。
主人を失った部屋は、ただレオの虚しい泣き声を響かせていた。