「……大変、だったんですよ。慣れないカラーコンタクトして、親子だって思われないように、必死で無表情になって、敬語も練習して……」

「どうして、この時代に来たんだ?」

「……最初は……偶然だった。タイムマシーンの不時着で、偶然この時代に来たの。帰ろうと思えば……直ぐに帰れたのに……暇つぶしのバイトだったはずの花屋にいるのが……楽しくて……帰れなくなってた。そのうちに、高校生のお母さんが来たのは本当に驚いたよ。私の時代で……言ってたはずだったの……お母さんと、お父さんが出会ったのは花屋だったって……だけど、まさかその花屋だったなんて知らなくて……」

レオは目を見開いた。

「……だけど……一番驚いたのは、お母さんが……自分の父親に恋してたこと……。そんなこと、一度も私に話してくれなかった。……私……生まれつき、何故か未来予知の能力を持っていたから、知ったときはなんとか出来ると思った。だけど、だんだんと私一人じゃどうにもできなくなって……」

「それで、俺に?」

リムは苦しそうに顔を歪めながら頷いた。

「お……願い。私の代わりに……お母さんを……助け……てっ……! もう、時間がないの……」

レオは病室でリムと同じように血を吐いていたリンの姿を思い浮かべた。

「お前は、怖くないのか?」

レオはリムを真っ直ぐに見つめて問う。

「……怖くなんか……ないなんて言ったら……嘘です。自分がこうなるって……分かっていたけど、一日が過ぎるごとに……私と関わった人たちから私との記憶が無くなっていく。それがどれだけ怖いか……。もしかしたら、眠っている間に……目を閉じている間に……自分がこの世からいなくなってるんじゃないかって思うとっ……!」

レオはぎゅっと、リムを抱きしめた。