夢中で駆けた。

完全に日が沈み、街には家に帰る人々の姿が多くいる。

そんな中を、レオは必死で走ってリムの家に向かっていた。

ロアの話では、五丁目三番地のフレアホームというマンションの205号室に住んでいるらしい。

レオはそのマンションに着くと、まずエントランスで205号室のインターホンを押す。

だが、誰も出ることはなかった。

「くそっ」

レオは舌打ちして管理人室を叩く。

「はい?」

やや中年男性の管理人は、激しく息を切らしているレオを不思議そうに見つめていた。

「……ここのマンションに住んでいる友達が……急病で……呼んでも返事がないんです。エントランスの扉を……開けていただけますか」

「あ、はいはいっ」

管理人は慌てた様子で、管理人室からエントランスの扉のロックを解除して開けた。

「ありがとうございます!」

レオは軽く会釈して二階まで駆け上がっていき、205号室の扉を叩いた。

「リム! 大丈夫か!?」

レオが扉を激しく叩いても、全く返事がない。

扉をこじ開けようと取っ手に手をかけると、簡単に開いた。

レオは土足で家に上がる。

「リム! どこだ、リム!」

電気が点けられていないリビングには、趣味のいい家具が揃えられ綺麗に片付けられていた。

だが、その家具も透けてなくなりかけている。

持ち主が存在しなかったことになれば、この家具も買われなかったことになる。

だから、消えかけているのだとレオは直感的に思った。

すると、リビングの隣の部屋から激しく咳をする音が聞こえて来る。

「リム!?」

レオはその部屋の扉を開けた。