「お父さん」

「ん?」

「大好き」

少しだけ素直になってみようと思った。

父はそんなあたしを見て、驚いたような表情を浮かべている。

「明日は雨か?」

父は窓の外を眺めた。

「何でそうなるの!」

あたしはそんな父は睨みつける。

と、窓の外を眺める父の表情が穏やかなのに気付いた。

「どうしたの?」

「星が凄く綺麗だ」

あたしは父の隣に立って、一緒に空を眺める。

「わぁ、本当だ」

数多の星々が夜空の暗闇を優しく照らしていた。

あの星にも誰か自分のように暮らしている人がいるとは、そう簡単に思えない。

そして、あたしが見ている星の近くでは、空がにたりと笑っているかのような細い月。

あの人は今何をしているのだろう。

元気にしているのだろうか。

23年前の時代の星空は、どうなんだろう。

そんなどうしようもない疑問があたしの頭をよぎる。

「お父さん」

「あ?」

「お母さんと、こんなふうに星を眺めたことってある?」

あたしは星空を眺めながら父に問う。

父は横目であたしを見つめていた。

「そうだなぁ……お母さんとは、なかったかも知れないな」

「ふぅん」

「今度、一緒にお母さんの墓参りにでも行くか?」

「うん!」

あたしはにっこりと笑って頷いた。