「それでね、レオが……」
「本当に!? あっは、馬鹿だねぇ!」
日が暮れるまで、あたしはライムと何気ない話をしていた。
と、扉が鳴って外からは父が入ってくる。
「わ、あ、こ、こんばんは! ロウンさんっ」
ライムはベッドの隣に置いてあった椅子から、慌てて立ち上がり一礼した。
有名人の前ではやっぱり緊張してしまうのだろうか。
「こんばんは。君はライムちゃんだったね。来てくれてありがとう」
父はにっこりと微笑んで軽く会釈した。
「わぁ、いつ見てもやっぱり……かっこいい」
ライムは顔を赤くしてこう言った瞬間、あたしは思いっきり噴き出してしまった。
「これのどこが……っいったぁい!」
「これ言うな」
父はあたしの頭を平手で殴る。
ライムは苦笑しながらその様子を見つめていた。
「あの、じゃあ帰りますね。遅くまですいませんでした。またね、リンちゃん」
「うん、またね」
あたしは病室を出て行くライムに手を振って見送った。
「いい子だな」
「あれ、お世辞だから真に受けない方がいいよ」
「なんだよ、自分の父親がかっこいいと思ったことないのか?」
「えぇ、一度も」
あたしは父の問いにきっぱりと答えた。
「はぁ……いつの間にこんな素直じゃなくなったんだか」
父はため息をついてうな垂れる。
「あたしはずっとへそ曲がりでしたぁ。それより、よくここまで何もなく来れたね?」
「何もないわけねぇだろうが。報道陣から逃げるために、何度車を乗り換えしてきたことか。マネージャーのクライムさんもややキレ気味だったよ」
「……本当にごめんね」
「だから、お前のせいじゃないって言ってるだろうが。お前が元気ならそれでいい。医者はなんだって?」
「明後日にでも退院できるって」
「そうか、良かったな」
父は安堵したように微笑み、あたしの頭を優しく撫でた。