「いただきまーす」

あたしは意を決してグラタンを口に運んだ。と、

「あれ? 美味しい」

「あれとはなんだ、あれとはっ。俺が作るんだから、うまいに決まってんだろうが!」

父はあたしをぎろりと睨んだ。

「へぇ、まさかお父さんが料理できるなんてねぇ。初めて知った……」

「お前は他人に全く興味を示さないからな」

父は深い深いため息をついた。

「どういう意味よ!」

「当分、お前の結婚だとかは考えなくてよさそうだ」

「しっつれいだなぁ!」

ったく。

と、あたしは怒りながらグラタンを口に頬張った。

その様子を意地悪げに見つめる父。

こんなに穏やかな日は初めてかも知れない。

こんな日がずっと続けばいいのにな。

あたしはグラタンを頬張りつつ、こう考えていた。