「おぅ、レオ。リンちゃんの様子はどう?」

花屋に入った瞬間、ロアはレジからレオに向かって手を上げる。

世間ではロアとレオのことは知られていなかった。

なので、花屋ではいつもどおり穏やかな時間が流れている。

「え、レオ! リンちゃんの病院行ってきたの!? どうだった!? リンちゃん、無事だよね!?」

フラワーアレンジメントをしていたライムは、レオの肩を掴んで質問攻めにした。

「起きたよ。いつもどおり元気だった」

「そう……良かった。後であたしもお花持ってお見舞いに行こうっと」

ライムは安堵の息をついて再び仕事に戻る。

レオは仕事に取り掛かろうとエプロンを取りに行くと、

「リンちゃんが元気なのに、浮かない顔だねぇ?」

ロアはレオの様子を伺うかのように見つめていた。

「ロアさん……」

「はい?」

「失恋の対処方を教えてください」

ロアは苦笑しながらうな垂れているレオを見る。

「今告白しちゃ駄目でしょうが」

「あいつ、訊いてきたんです。ラウルはいなかったか」

ロアは驚いたような表情を浮かべた。

「……リンちゃん、気付いてたの?」

レオは無言で首を横に振った。

「分かりません。来てないとは言っておきました。……あいつ、ラウルにもう会えないって分かってるのに、無理して笑うんです。俺、見てられなくて」

「時間が経てば忘れられるだろう。それか、無理にでも忘れさせちまえば……」

「俺はロアさんとは違いますからね」

レオはじっとロアを睨んで離れていく。

「甘いねぇ」

ロアは苦笑しながら首を振り、レオの後姿を見つめた。