あたしは洗面所で血が付いた手を洗う。

レオはその様子を黙って見つめていた。

「……レオ、ありがとう」

あたしはそんなレオに向かって微笑む。

「レオが助けてくれたんでしょ? ありがと」

「え、あ、あぁ」

レオはあたしと視線を合わせようとしなかった。

あたしはベッドに座り込む。

「ねぇ、レオ。ラウル、来てなかった?」

「……へ?」

「呼ばれた気がしたの。リンって。あ、でも、レオはラウルのこと、見たことないもんね」

あたしは苦笑する。

そうだ、ラウルが今更来るはずない。

第一、どうやったらあたしがさらわれてるなんて、時が違うのに分かるんだろう。

「……あぁ、来てなかった」

「そっか」

暗い表情のままのレオに笑いかけた。

「でも、凄いよね、銃を持ってた人を倒しちゃうなんてさ、さすがレオとロアさ――」

と、その瞬間にレオはあたしを抱きしめた。

父とは違って、優しくあたしを抱きしめる。

「……レオ?」

「……うな」

「え?」

「……笑うな。辛いんだったら、笑うな。無理したお前の笑顔なんか、見たくない。泣きたいなら、泣けばいいだろうがっ。好きな奴と会えなくなったのに、どうしてお前は笑うんだよ! 俺の前だけでは、自分に素直でいろっ!」