「この馬鹿! もう起きないと思っただろうがっ!」

父は泣いていた。

あたしが泣かせてしまったのだ。

父には心配かけないと決心したのに、あたしは父を泣かせてしまったのだ。

「ごめん……なさい……あたし、もうお父さんに心配かけないって決めたのに……ごめんなさいっ!」

あたしは父の背に腕を回して泣きながら抱きしめ返した。

暖かく、優しい香りが鼻腔をくすぐる。

父は優しく微笑み、あたしの頬を撫でた。

「子供ってのは、親に心配かけて生きるもんなんだ。心配かけないで、自立した子供なんて可愛くないだろ?」

父はそう言ってもう一度あたしを抱きしめる。

と、咳が込み上げてきた。

「風邪か?」

あたしは首を横に振る。

咳はしばらく止まらなかった。

父が背を擦ってくれる。

「……分からないの……病院に行っても……風邪じゃないって。ねぇ、お父さん。あたし、何があったのか覚えてないんだけど」

「さらわれたんだよ。金目的で」

あたしは目を見開く。

「さ、さらわれた!? あたしが!?」

「あぁ、今はそのニュースで持ちきりだ」

「ごめんなさい……」

「お前のせいじゃない。だけど、お前は本当にいい友達を持ったな」

「いい友達?」

「レオ君とロアさんがお前を助けてくれたんだ」

あたしは再び目を見開いた。

「れ、レオとロアさんが!?」

「あぁ、よくまぁ、銃を持った男を押さえ込めたもんだな」

父は苦笑しながら立ち上がった。