ただひたすら一つの光を追って走っていた。

とても怖くて、苦しくて、その場から逃げ出さなくちゃいけないという衝動に襲われる。

と、光の目の前まで行くと、急に手が暖かくなった。

懐かしくて、優しい香りがする。

その温もりも、香りも、愛おしく思った。

「ラ……ウル……」

重い瞼を開けた瞬間、何かが零れる。

それが涙だと分かるまで、しばらく時間がかかった。

あたしの手を握っていたのは父親である、ロウンだ。

ぎゅっと手をしっかり握って、白いベッドに顔を伏せて眠っている。

周りを見る限り、ここは病院らしい。

何があったのか、理解出来なかった。

男性に話しかけられ、頭を殴られ――

「お父さん」

あたしは父を揺すり起こした。

「ん……リン!?」

父はあたしを見て思いっきり目を見開く。

そして、潰れちゃうんじゃないかと思うくらいの力で抱きしめられた。