「この……憎たらしい……」
レオはリンの後姿を見て呻く。
「……出会ってしまいました」
レオの直ぐ横でリムが呟いた。
「ぎゃぁ!」
リムはリンが生けた花を呆然と見つめる。
「びっくりさせんなよ……この花、誰からのか分かるのか……?」
リムはゆっくりと頷く。
「……出会いがあれば……別れがある。けれど人は、その考えを否定する……。それは、別れたくないから……。だから人はときに誤った方へと歩んでしまう。そこに悲劇が待っているとも知らずに……」
リムはレオを見上げた。
「リンさんを……本当の道に戻せるのは誰でしょうね?」
レオは訳が分からんというような表情を浮かべる。
「悲劇……?」
「……未来は誰にも分からない……どんな人でも予想をするだけに過ぎない。……あなたに、どんな未来も受け入れる覚悟はありますか…」
「……悪い、リム。言ってることが全く分からん」
リムはくすっと笑って、
「じゃぁ、あたしが言ったことが分かったとき。あるいは、未来が分からなくなったときに来てください」
リムは、ポケットからリンが引いたカードと同じ柄のカードを出してレオに渡した。
「占いの館……」
カードには住所などが書いてあった。
「リンさんの力になれるのは……あなただけだと思います」
「……はあ……」
レオは曖昧に返事をする。
リムは黙ってその場から離れた。
「俺だけねぇ……」
と、レオは掃除をしているリンに視線を向ける。
「……あいつは一人でも十分やっていけると思うけどな」
レオは苦笑を浮かべてカードをポケットに入れた。