空はもう真っ暗だった。
リンがいつも何処にいるかなんてレオは知らない。
花屋にでも行くかと思う。
顔は冷静を保っているものの、レオの体は花屋へと急いでいた。
花屋には少し明かりが付いている。
レオは花屋の扉を叩いた。
「ロアさんっ! 開けてくださいっ!」
扉の取っ手を引くと簡単に開いた。
レオはロアがいつもいる休憩室に向かう。
「ロアさんっ、リンがっ……!」
そう叫んだとき、ロアは見知らぬ女とキスを交わしていた。
レオはすっと目を細めて、ロアの頭を殴る。
「あんたは仕事先で何やってんだ阿呆っ!!」
ついでに怒鳴ってもみた。
見知らぬ女は困惑の表情を浮かべている。
「いでーよ間抜け。悔しかったら彼女の一人でも作ってみろぉー」
ロアは半眼でレオを見つめる。
が、全く焦点が合っていない。
さては、こいつ飲んでるな。
「リンが家に帰ってないらしいんです! この様子だと、ここにはいないみたいですけど」
「リンパ液が胃に返ってない?」
レオはもう一度ロアの頭を殴った。
今度はさっきよりも強めに。
「リン! リンが家に帰ってねぇーの! 分かったら捜すの手伝えっ!」
レオがロアの耳元で怒鳴ると、ロアは我に返った。
「……リンちゃんが?」
「やっと分かってくれました?」
レオはため息をつく。
ロアは見知らぬ女に事情を話し、女には帰ってもらった。
「で、リンちゃんが帰ってないんだ?」
「だから、さっきから何度も言ってるじゃないですか!」
「どこに行った訳?」
「それが分かってりゃ苦労しませんよ!」
「まぁ、そうだわな」
ロアは頭を押さえ、痛そうに顔を歪める。
「ロアさんがいけないんですよ」
「分かってるって……」
ロアは苦笑しながら頷いた。
と、レオの携帯が鳴る。
「はい」
出ると、血相変えたロウンの姿が映った。
『……リリーンの居場所が分かった』