「そろそろ行くか」
時計を見上げて、ラウルは呟いた。
と、家のチャイムが鳴る。
待てなくてリンが来たのかと思いながら、扉の向こうの相手の確認せずに扉を開けた。
と、目の前には見覚えがない女の子が立っている。
女の子は、驚愕の表情を浮かべて顔を真っ赤にしていた。
「え……と……」
やばい。
非常にやばい。
事務所の社長に殺されるかも知れない。
ラウルの家がバレたなんてことマネージャーのフェリウスに知られたら……。
などと、ラウルは一瞬でそんなことを考えていた。
「あの……! あ、あたし前からずっとラウル様のことが好きでしたっ……!!」
と、いきなり女の子はそう叫び、ラウルに迫る。
「ちょ、ちょちょちょ……!!」
ちょっと待て。
何でよりによって今日!?
と、ラウルは心の中で嘆いて後ずさる。
「……えーとさ、俺、もう彼女いるんだ」
「そんなの、関係ない! ずっと……あたし、あなたしか考えられなくて……本当に好きなのっ!」
「ごめん、俺これから用があって……じゃ、ありがとな」
と、ラウルは引越し先を考えながら扉を閉めようとすると、女の子は家の中に足を踏み入れ、ラウルに抱きつく。
ラウルはぎょっとした。
「好きなの……あたし……本気です」
「ちょ、困る! 俺にはもうっ……んっ……!」
女の子はラウルの首に腕を回し、唇を重ねた。
舌を絡めとられて身動きが取れない。