拗ねたか。
と、ロウンは苦笑気味の表情でわが子を見つめる。
ロウン自身、心配してない訳じゃなかった。
ただ、信じていたかったのだ。
自分の娘と彼氏とやらを。
リンが家を出た後、ロウンは立ち上がって悪いと思いながら娘の部屋に入った。
そして、ふと机の上の写真が目に入る。
そこには自分がよく知った男と娘が、浜辺で満面の笑みを浮かべていた。
こんな所に飾って置くなんて、まさか父親が自分の部屋に入るなんて思ってもいなかったのだろう。
ロウンはふっと笑みを浮かべ、服のポケットから封筒を取り出す。
その封筒の中には、手紙と二個の指輪と写真が入れられていた。
ロウンは机に飾られている写真と、自分が持っている写真を横に並べてみる。
全く同じの二枚の写真を見て、ロウンはため息をついた。
指輪はリンがしているのと同じ。
手紙は何度も読み返してボロボロになっていた。
ロウンはただ、娘と『自分』を信じることしか出来なかったのだ。
自分にとって、あれは過去に過ぎない。
過去を変えることなどラウルにはとても出来なかった。
だから、こうして信じることしか出来ないのだ。
日に日に弱っていく自分の娘を助けることも出来ない。
俺は、本当に最低な父親だな。
ロウンは首を横に振って下唇に噛み付いた。
と、家のチャイムが鳴る。
「はい」
ロウンはそっと扉を開けて、扉の前に立っている少女を見つめた。
水色に近い灰色の大きな瞳。
その瞳は、その少女が天王星人だということを主張していた。
少女は甘ロリ風のフリルの洋服を着て、少し照れたような笑みを浮かべて立っている。
「……君は?」
「あなたの孫です。この時代では、初めまして……ですね」
その少女はにっこりと微笑んで軽く一礼した。