「あ、コウロウの花束をお届けに参りました。ラウル様でよろしいでしょうか」
「ああ、どうも。いくら?」
「四百円です」
あたしがそう言うと、ラウルと名乗った男は財布を出してあたしにお金を渡す。
「へぇ、これがコウロウね。花言葉は永遠の愛だっけ?」
ラウルは物珍しそうに花束を見ていた。
オレンジのようなピンク色をしていて、レースみらいな花びらの花。
あぁ、そういえばこの花は10年前に開発されたばかりの花だ。
23年前の今にはまだない。
「お花に詳しいんですね。お花、好きですか?」
あたしはお金を財布にしまいながら問う。
「まぁ、ファンとかによく貰うから」
「ファン……?」
「あ、俺一応俳優なんだ。だから、よく花とか贈られてくるんだけど、コウロウの花は見たことがなかったから」
「偶然ですね、あたしの父も俳優なんです。あなたとはぜんっぜん違いますけど。コウロウの花は誰かから聞いたんですか?」
あたしは首を傾げて訊いてみた。
「ああ、友達に聞いたんだよ。変わった花が開発されたって。君のお父さんも俳優なんだ。忙しそう?」
「はい、まぁ。今日は何故か珍しく家にいましたけど。誕生日だからかな」
「君、誕生日なの」
「あ、あはは……やっと二十歳です」
全く、何呑気にお客と話し込んじゃってんだあたしは。
「じゃぁ、これ」
男は花束から一本コウロウの花を抜いてあたしに差し出す。
「へっ?」
「プレゼント」
男は苦笑のような笑みを浮かべてこう言った。
あたしはくすっと笑い、その花を受け取る。
「ありがとうございます。嬉しいです」
あたしは両手でコウロウを握った。
「いいえ」
「それじゃ、ありがとうございました。失礼します」
あたしは一礼してタイムマシーンに戻った。