レオは棚に溜まった埃を雑巾で拭いていた。と、
「……明日、10時です」
「ぎゃあっ!」
レオの叫び声で店中の者がレオに注目する。
幸い、お客はいなかった。
「レオ、うるさい」
リンは半眼でレオを見つめる。
「わりぃ……」
レオはため息をついてリムの声が聞こえた方を向いた。
が、リムはいない。
「あ、れ……?」
「ここですよ」
レオはもう一度出そうになった叫び声を抑える。
リムはいつの間にか、土が置かれた棚と棚の間から顔を出していた。
「お前、本当に神出鬼没だな……普通に現れられないのか」
「無理です」
即答だった。
レオはため息をついて棚の埃を払い落とし始める。
「明日、10時にリンさんはラウルさんと遊園地に行くそうです」
「……で、俺にどうしろと?」
レオは手を止めずにリムに問いかけた。
「それは自分で考えて下さい。私は手伝うだけ。どうにかするのはあなたですよ」
「どうにかって言われてもなぁ」
レオは途方にくれたような口調でこう言う。
リムは呆れたようにレオを見つめた。
「あなたがどうにかしなければ、リンさんは死ぬんですよ」
「……わぁってる」
「お任せします」
そう言って、リムは棚の間から消えた。
何処に向かったのかと思えば、ずっと離れたレジの方のゴミを掃いている。
この短時間であんなに早く移動できるのか。
と、レオは一瞬悩んだが、それよりもリンのことが気になってそっちの思考を止めた。