メリアはお菓子を持って、以前とちっとも変わっていないリンの家のベルを鳴らした。

と、中からは私服のリンの父のロウンが出て来る。

「お久しぶりです、サッチェスさん」

メリアはにっこりと微笑んでお辞儀する。

やはり、父はいたのか。

「あぁ、メリア先生。帰っていらしたのですか。どうぞ、中に」

ロウンも同じような笑みを浮かべて、メリアを中に入れた。

「どうぞ、散らかっていますがソファに座っていてください。お茶を入れて来ますので」

「あ、お構いなく」

ロウンはお茶を入れにキッチンに消えて行った。

ソファの前の机には、沢山の原稿用紙に紙くずが置かれていた。

「リリーンは今日もバイトをしていましたか?」

と、ロウンはコップにお茶を注ぎながら問う。

「え、あぁ、はい。相変わらず元気そうで良かったです」

メリアは引きつった笑みを浮かべながら答える。

まさか、親に今日はバイトに出ていないなんて言える訳がない。

一人娘がバイトに出ていないと知ったらどれだけ心配するか……。

「あそこまで明るくなったのは、皆さんのお陰ですよ。見ての通り、あの子は引っ込みがちな性格なので、友達も多くありませんでしたし。本当に、メリア先生たちには感謝しています」

ロウンはそう言いながら、メリアの前にコップを置いた。

「あ、いいえ。とんでもない。ありがとうございます」

「それで、今日はどういったご用件で?」

ロウンは散らかった原稿用紙をまとめて机の横に置く。

そして、メリアの向かい側に座った。