次の日。

「出る準備はできた?」

フィルシアがノックして扉を開けた。

「ん、もうできたよ。に、してもこんなにあたし、大荷物で来たかな」

あたしは馬鹿デカいバッグに、お土産の袋を持って言った。

最初は手ぶらだったはず。

「じゃあ、気をつけて帰れよ」

ラウルはあたしの頭に手を乗っける。

あたしとフィルシアはラウルたちとは違う、日本に帰るエレベーターで帰ることになったのだ。

一緒にわんさか出ると、パパラッチだとか報道陣だとかに捕まるからということらしい。

確かに、有名人のラウルに未来人の彼女がいたなんて世間に報道されたら、それこそラウルはクビだ。

「うん、ラウルも気をつけてね。あ、夜ご飯はちゃんと作りに行くから」

あたしはにっこりと微笑む。

普通なら、キスでお別れとかなんだろうが……と、あたしとラウルは扉からこちらを見ているフィルシアに視線を向ける。

「はいはい、お邪魔ですね」

視線に気づいたフィルシアは、苦笑しながら部屋を出て行く。

あたしとラウルはくすくす笑った。

そして、そっと唇を重ねる。

「お仕事、頑張ってね」

唇が離れた後、あたしはにっこりと微笑みながらこう言った。

「ああ、お前もバイト頑張れよ」

「うん」

あたしは頷いてラウルから離れようとした。

と、足の力が抜けて崩れるように倒れてしまう。

「リンっ!?」

「……へ、平気。ちょっと力が抜けちゃっただけ」

激しい頭痛に襲われる。

何なんだ、本当に。