20年前のハウワイ島の夜。
日も既に暮れて真っ暗になった頃、ラウルは帰ってきた。
「予定より早く終わったよ」
疲れたような声を出して、ソファに座る。
「なんだか、嫌な感じ。まるであたしがいなかったお陰みたいで」
フィルシアは口を突き出して不満げに言った。
「まぁまぁ」
あたしは苦笑しながらフィルシアを慰める。
「今日のご飯は煮物だよ。フィルシアと一緒に作ったの」
「へぇー」
ラウルはあからさまに嫌そうな顔をしてそっぽ向く。
「何よっ、あたしが作ったのは食べられないわけっ!?」
フィルシアはぎろりとラウルを睨んだ。
「間違いなく、昨日の美味さより半減してるな」
と、ラウルは言い切った。
「食べてみてから言いなさいよねっ! このボケっ!」
フィルシアは乱暴に煮物が入った皿を机に置いた。
あたしはくすっと笑ってラウルに近寄り耳元で、
「元気みたいで良かったね」
と、囁いた。
「全く、心配させやがって……」
ラウルは安堵の息か、ため息かよく分からない息をつく。
「なぁによ、そこっ!」
フィルシアはあたしとラウルを睨む。
「別に。さ、皆で食べよっ」
あたしたち三人は席について食べ始めた。