リムは覚悟が出来ているレオを真っ直ぐ真剣に見つめた。

「なら、悪魔になってください」

「悪魔?」

「そう、あの二人を別れさせてください。きっと、あなたにしか出来ない」

レオは俯いた。

あんなに幸せそうなリンを、俺はどん底に突き落としていいのだろうか。

「悪魔になり切れないのなら、リンさんが死ぬだけです」

「……やる」

リムは一言言ったレオをじっと見つめている。

これから何をするのか、まるで心を読んでいるかのように。

「俺が、あいつらを別れさせればリンは生きていられるんだな」

「はい」

「なら、やる」

「……分かりました。では、また迷ったときに来てください。相談くらいなら乗ります」

「……あぁ。ありがとう。金は、受付か?」

「要りません。占いは、お金儲けのためでやっているわけじゃないんです」

「そうか」

リムはすっと椅子から立ち上がり、レオの前まで移動する。



「……あなたにとって、今日が幸せな日になりますように……」



そして、深々と一礼した。

レオは苦笑しながら、

「今日だけじゃなくて、ずっと幸せならいいのにな」

と、呟くように言った。

「この世に、ずっとや永遠なんて存在しませんから」

リムはくすっと子供のように無邪気に笑う。

「……そうだな。じゃ、また花屋でな」

レオはリムを背に、部屋をそっと出て行った。