「何?」
あたしはフィルシアの隣に座った。
「……本当はね、まだ退院しちゃいけなかったの」
「はぁっ!?」
あたしは驚愕の表情を浮かべる。
まだ退院しちゃいけなかったってことは、病気が完治してないってことではないのだろうか。
それってかなりまずいんじゃ?
「でも、あたしもう自分で分かるのよ。どんなに苦しい手術を受けたって、自分の病気が治らないことぐらい。だから、せめて死ぬときまで皆と一緒に仕事をしていたいの」
「そんな、まだ死ぬって決まった訳じゃないし」
「自分の体は、自分がよく知ってるの。でも、心残りがラウルなのよ。自分が死んだあとでも幼馴染には幸せになってもらいたいじゃない。そこであなたが来てくれた。未来人でもなんでも関係ない。あなたとラウルが両思いの限り、あなたたちには幸せでいてほしいわけ」
「はあ」
なんか、責任重大って気がしてきた。
いや、でも未来人と過去人は結婚できない。
まぁ、結婚が全てってわけじゃないんだろうけど。
などと、あたしは関係ないことを頭の中で考え始める。
「リンちゃん、あいつをお願いね」
「だから、まだ死ぬって決まった訳じゃないんだからさ」
あたしは苦笑する。
でも、本当に危ないのかも知れないとも、内心思っていた。
発作が起きる度に心臓に負担がかかってるんだもん。
相当危ないと思う。
「あ、お昼ご飯は昨日の残りのハンバーグでいい?」
「あぁ! やっぱりリンちゃんの手料理だったのねっ! 昨日、皆でホテルのレストランで飲み会だったのに、ラウル一人断ったの。やっぱり、リンちゃんの手料理の方が食べたかったのねぇ!」
フィルシアは自分のことのように嬉しそうに言った。
なんだか、こっちが照れてきてしまう。
「味の保障はしないからねっ」
あたしは赤い顔を見られないようにフィルシアに背を向け、ハンバーグを温め始めた。