「歩ける?」

「平気。そんなに心配しなくても、いつものことだから慣れてるわ」

フィルシアは苦笑のような笑みを浮かべて歩き出す。

あたしはフィルシアのバッグを持って、フィルシアと部屋に戻った。

「お水いる?」

「あ、ありがと」

あたしはベッドの上に座っているフィルシアに、水が入ったコップを差し出した。

「ごめんねぇ、迷惑かけちゃって」

フィルシアは申し訳なさそうな口調でこう言う。

「全然。でも、やっぱり退院してからすぐ仕事はきついよ。ちゃんとゆっくりしないと」

あたしがこう言うと、フィルシアの表情は物凄く暗くなった。

あたしは何か悪いこと言ったかな、と少し不安になる。

「リンちゃん、ラウルにも、誰にも言わないでくれる?」

フィルシアは上目目線であたしを見つめた。