痛いなら痛いって素直に言えばいいのに。


蘭君は無表情を崩さず、心配をかけないようにそっと。私から離れた。




「蘭さん大丈夫ですか!?」


「お怪我は!!?」



くるくると巻かれた髪の毛に、きつい香水の匂いが蘭君を取り囲む。


私なんか元から居なかったみたいに、透明人間扱い。



誰にも見向きもされなくて
唯一私を心配して駆け寄ってくれたのは光花だけだった。




「なによ、あの男。デレデレしちゃってさ」



美人数人に囲まれてる蘭君に、光花が小声で嫌味。



デレデレなんて...そんなことないと思うけど。



実際女の人に囲まれて、嫌そうにしてる蘭君の表情が、私の心を少しだけときめかせる。


...腕、大丈夫かな?



そう、聞きたいのに。


あの集団の中に飛び込む勇気なんて出ない。



そう思っていたら。