「あっ、あれ、あれ。」


「へっ...?」


「あの人って、カラオケの店員だったよね、確か」



光花の指先が示す方向に目を向けると。



驚いた。



驚きすぎて、私も光花と同じように開いた口が塞がらない。




「らん、くん...」



バイクと派手な男達に囲まれて、一人異様な雰囲気が漂っている蘭君がそこには居た。



なんで今まで気づかなかったんだろう...



彼の存在に気づいた瞬間


目が彼に吸い込まれたみたいに、視線を逸らせない。




「彩羽...?」


「...」


「おーい、いろは。
ちょっと、あんたなに固まってんのよ!!人も増えてきたし、見つかる前に帰るわよ」


「へっ...?!」



名前を呼ばれても反応出来ないくらい。


蘭君のことが気になってしょうがない。




やだよ...これじゃあまるで、私が蘭くんのこと好きみたいじゃんか...。




わたし、あんな最低男だけは絶対に好きだって認めたくない。



認めたくないのに...