そう自分に言い聞かせながら、鞄を持って玄関の方へくるりと体を向ける。




「帰るのか?」


「うん、蘭君の傷の手当てもしたし。
ご飯もちゃんと食べてくれたし、安心して帰れるよ〜」



笑いながら軽く言ってみたけど、ほんとは帰りたくない。


もうちょっと蘭君と一緒に居たい。


でもこれ以上一緒に居ると、蘭君をイライラさせてしまいそうだから。



「じゃあな」



蘭君ってばほんと呆気ない。


少しくらい止めてくれてもいいじゃんか。


「...うん、ばいばい」



次、いつ会えるのか。
また会えるかなんて、もう考えちゃってるよ。



「はあー...」


ため息を零しながら、妙に寂しげな玄関で靴を履いた。



ドアにもたれかかるように押して開けたら。



ザァーーーー......。




外は土砂降り。



下へ下へと勢いよく落ちていく雫が、ひどいくらいに私の視界を支配した。