意識のない彼に、許可なんか求めたって、言葉が返ってこないことくらい分かってたけど。
冷静ではいられない。
とにかく早く彼の看病をしたくて、恐る恐る彼のズボンに手を入れた。
そこにあったのは、少し尖った鍵。
最初は人の家に許可なく上がっていいのか...躊躇(ためら)ったけど。
それを鍵穴に差し込んでドアを開けた。
「...お邪魔します...」
本物の金で出来ているんじゃないかと疑ってしまうほど、手をかけたドアノブの重さに驚いた。
彼の家に足を踏み入れるのは、これで2度目。
まさかこんな形でまた来ることになるなんて...。
「蘭君、寝室、失礼します」
そう言って、寝室のドアを開けたら、いい匂いが鼻を刺激する。
緊張で唾を飲む喉の音が止まらない。
黒色のベッドに、彼を寝かせるのにも一苦労。
やっと蘭君の全体重から解放された。