「らん、くん。」


「...」


「蘭君大丈夫...?ねえ、蘭君」




何度名前を呼んでも、応答がない。


綺麗な顔して眠る彼はーーーまるで眠り王子。



おとぎ話という空想の中で作りあげられたような、そんな異次元さを持っている。




「どうしよう...えっと、救急車は...」



女ひとりの力で、この状況をどうにかすることなんて出来ない。


だけど

意識を失ってる人たちを見ると、どうしてもほっとくわけにもいかず。




「んしょ...」


意識のない蘭君の腕を私の肩に回した。


さすが男の人。
ほっそりして見えて、けっこう体重がある。


とにかく気合いだけで蘭君を蘭君の家まで引きずった。



数時間経って、やっと見えてきた高級マンション。



すぐに救急車に電話して、倒れている男達の場所を教えた。




面倒事には関わりたくないのが当たり前。



だから非通知でかけたけど...


蘭君だけ最初に助けるなんて、いつもの私らしくない。



でも知らない人達を助けるよりは
知ってる人を優先して助けるのが、感情的に当たり前だと思うんだ。