さすがにまたこの街に足を踏み入れのには抵抗があった。
ナンパされて、街とは賑やかさも華やかさもない"裏"に連れてこられて。
そこにあった薄気味悪いカラオケ店で襲われそうになって...。
思い返すと、いい思い出と言うよりは...噛めば噛むほど苦さが増す思い出。
でもそこで蘭君と出会ったんだ。
優しくて
強くて
でも決して心を開いてくれない蘭君に。
一体彼は、どうやってこの"世界"で生きてきたんだろう。
知りたくなって、近づきたくて。
もう少しで蘭君の家に着きそうなところで、運がいいのか悪いのか。
錆(さび)だらけの不気味な路地裏で、人が壁にもたれてながら倒れていた。
酔っ払い...?
暗くてよく見えないけど...少しだけ傷を負っている男。
関わりたくなくてそのまま素通りしようとした。