「詳しいことは、騎士団で聞きましょうか」

「は? 騎士団って…お前、まさか…」


それ以上男は話すことはできなかった。

話すよりも先にシアンによって鞘で殴られ、意識を失ったからだった。


「シアン、あの…」


倒れた男達が動くことができないように処置をするシアンに、アメリアは呼びかける。

シアンは振り返ることなくこう話した。


「この男達は誘拐の常習犯です。最近このマリル港で頻発していた若い女性の誘拐・失踪に関わっていると考えられます」

「誘拐、ですか」

「おそらく他国に売りさばいていたのでしょう」


淡々と告げられる言葉の数々に、アメリアは恐怖を感じて自分を抱きしめる。

シアンが助けに来てくれなかったら、自分も誘拐されてたかもしれない。


「人数が多いですから、このままここに置いてマリル基地に護送を頼むことにします。全員気を失っているようなので、ひとまず大丈夫でしょう」


身柄を拘束した男達がこの場から逃げられないように頑丈に縄で縛った。


「それより、貴女って人は!」


シアンは思い出したように怒り出した。


「言ったでしょう、ここは楽しいだけの港ではないと! 危険もあると! 僕が気付いたから事なきを得たものの、もし気付かなかったらどうなっていたことか!」


シアンが怒るのも当然だとアメリアは思った。

迷子になった挙句こんな犯罪に巻き込まれて、仕事中だというのに迷惑をかけて。アメリアは自分が惨めで仕方がなかった。

思わずうつむくアメリアに、シアンは言う。


「…間一髪でしたが、間に合って良かった」


少しだけ柔らかいその声にアメリアは目を見開いて顔をあげた。