「すみませんが、私もこの土地には詳しくないので…」


そう断ろうとしたのだが、それならば一緒に楽しもう、と強引に腕を引っ張った。

慌てるアメリアに、男達は言う。


「せっかくこんなところで出会ったんだ、楽しまないと損だろ」


にたりと笑う男達の笑顔に鳥肌が立つ。

男達は観光で訪れたのかもしれないが、アメリアは仕事の一環でシアンとともにこの地に訪れたのだ。自分だけ遊びに行くわけにはいくまい。

そう思ってシアンの姿を探したのだが、人混みの中にシアンの姿はない。

はぐれてしまった。そのことに気付いて目を見開くアメリアをよそに、男達は強くアメリアの腕を引っ張る。

あっという間にアメリアは天幕街の裏道、人通りのないところまで連れていかれてしまった。


「やめてください!」


必死の声も、雑踏の中ではすぐにかき消された。誰にも届かない。


「無駄だって、観念しな」


男達の笑う声と強い力に恐怖を覚えながら睨みつけているると、不意に男の一人が叫び声をあげて倒れこんだ。

男達もアメリアも驚いてそちらを向くと、そこには鞘に包まれたままの剣を持ち男達をにらんでいるシアンの姿があった。


「し、シアン…」


思わず言葉が漏れたアメリアにシアンはちらりと目を向けた。アメリアの姿を確認したシアンは溜息を吐き出した。


「まったく、貴女は。迷子になるなと、あれほど言ったでしょう」


男達はシアンの突然の登場に苛立ちを隠せないようで、何者だと問うた。