「危険地帯、ですか」


シアンの言葉を繰り返しながら、アメリアはマリルの港町を見渡す。

確かに外国のものがたくさん入ってきていたり、観光を楽しもうとしている人々が見受けられたりするけれど、どれも明るくて楽しそうで、とても危険だと思えない。

ここに住む地元住民の人々も、楽しそうに活き活きと暮らしているようにアメリアには見えるのだ。


それを言うと、シアンは思い切り不機嫌な顔をする。


「だから、貴女は世間知らずなのですよ」


そう言うとアメリアの腕を掴んで歩き出した。

驚くアメリアがどこに行くのか尋ねると、振り返ることなくシアンは答える。どこか苛立っているようにも思えた。


「僕達がここに来たのは観光ではありません。まずは騎士団に顔を出して、それから仕事です」


シアンが言うには、ここマリル港には騎士団の基地、通称マリル基地があるらしい。

騎士団を示す青い旗を頼りに港沿いを歩いていると、青い軍服を着た男性が目を見開いてシアンに敬礼をした。

それを見たシアンは溜め息を吐いた。


「ご苦労様です。しかし外で、それもこの格好の僕に敬礼はしないでください。素性がバレる可能性が高まります」


それを聞いた団員は少し青ざめて「申し訳ありません!」と腰から直角に頭を下げて謝った。

それも目立ってしまうのでは、とアメリアが思っていると、どうやらシアンも同じことを考えていたようで少し頭を抱えた。