「何度も言っているでしょう。アメリアをここの裏方へと引き入れたのは僕ですから、その責任は果たさないといけないのです」

「相変わらず堅物だなァ、お前は。大体お前が直々に騎士団へ誘うこと自体珍しいのに」


ニヤニヤと意地く笑うレオナルドに、シアンはこれ以上何も言うなといわんばかりに睨みつける。

ひとつ溜息を吐くと、アメリアに顔を向けて「そういうことですから」とシアンは指をさした。


「これからすぐに出発します。街を見回るにはその恰好では目立つので、給湯室に置いてある予備の服に着替えてください」

「え? 私も着替えるんですか?」


早口に指示を下すシアンに聞き返すが、シアンは非常に苛立っているようで眉間にしわを寄せていた。


「すぐに出発します。遅れたら承知しません。あなたとの約束も破棄します」


それを聞いたアメリアはなんて理不尽だと思った。

しかし本当に約束を破棄されては困る。

「失礼します」と言うが早いか、飛び出すように給湯室の予備の服を取りに行った。


慌てて着替えたアメリアが再び団長室に向かうと、シアンとレオナルドは団長室から出ており、すでに出かける準備を済ませていた。


「遅いです」


シアンはいつものごとくため息を吐き出した。

アメリアはその言い方にムッとしながらも「これでも早く済ませたつもりなのですが」と言い返した。


「アメリア嬢、よく似合ってるぞ」


険悪な二人の空気をなんとか和ませようとレオナルドはそんなことを言い出した。