「翔ちゃんは……元カノとは1年間付き合ったとか言ってたかな」

メニューを見ながら発されたみいの声に、

「わたしの元彼より全然長いじゃん」と返す。

一度メニューを閉じ、席に案内されて間もなく運ばれてきた水に手を付けた。

再びメニューを開き、パスタなどのページに寄り道してからデザートのページに戻る。


「なんかね。元カノとは1年付き合ったとか言われるとさ、

あたしとはどれくらい一緒にいてくれるんだろ、とか思っちゃうよね」

「ああ……言われたことはないけど、わかるかも。ちょいと素直なこと言っちゃうと、

おたくが前の彼女さんとどれくらい過ごしたかなんて聞いてねえしとか思っちゃう」

わたしが言うと、みいは「ははは」と苦笑した。

「里香ちゃんきつーい。なんかそういうさ、『実は黒いのよ』みたいな、

『ネコ脱いだらすごのよ』みたいな部分があるから目移りされちゃったんじゃないの?

あ、俺こいつに殺られる、みたいなふうに思えて」

「そうなのかなあ? 結構いると思うんだけど、元カノの話されたくない女の人」

「元カノの話をされたくない人は多いよ、きっとね。

でも、お前がそいつとどれだけいたかなんて知りたくもねえよとまで思う人は少ないと思う」

「ちいと待て」

言葉がずいぶんひどくなっていないかと指摘すると、むしろこれでも優しくしたほうだと返ってきた。