食事を済ませ、席の形を戻しても元気のないみいに、

「そんなに気にすることないよ」と改めて声を掛ける。

「彼氏がいるだけで十分じゃない。わたしなんか、知ってるでしょ?

3年前に完璧ダーリンに捨てられたきり、ひとっつも出逢いがないの」


自分は未だ、カケルに捨てられたことを笑い話にできる状態ではなかったが、

それ以上にみいが元気であることのほうが重要に思え、笑顔でそう語った。


「里香は強いよね」

「そんなことないよ」

「里香を振った人以上の人、時間は掛かってもいつかは現れると思う?」

「どうだろうね。今は最高にそんなふうには思えないけど」

「だよねえ……」

みいは元気のない声を漏らすと、小さくため息を続けた。


少し悩んだ末、

「じゃあ今日もパフェ食べに行こうよ」と誘うと、彼女の目にいつものような光が宿った。

「本当?」

「うん。小銭を全部集めれば、なんとか野口英世1人分くらいの額にはなるはずだから」

「パフェかあ……。その単語聞いたら幸せが湧いてきた」

「よしよし、それはよかった」

「あたし、『全日本パフェを愛する高校生選手権』みたいなのがあったら、優勝する気しかしない」

「ふうん……。本当に好きなんだね」

「好きとか通り越して愛してる」

「愛してる……」

難しいこと言うね、と続けると、みいはそう?といつものような声を返した。