いつもの雰囲気を取り戻した教室で、斜め後ろの席にいるみいと流行や時代について盛り上がった。
「最近は結構自然なのが主流だけど、一昔前……いや二昔くらい前はぐるんぐるんなのが流行ってたらしいよね」
二昔前ってあまり聞かないけど、と苦笑してから、みいは「そうらしいね」と頷いた。
「あとメイクもさ、昔の映像とか流れるとみんな舞妓さんみたいじゃない? 真っ白で。顔と首の色の違いがすごいの」
「ああ、それわかる。でもそれ、今もちらちらいない?」
「ああ、いるかあ……」
「ね。いつか――てかそのうち、今も一昔前とか、里香じゃないけど二昔前とか言われるようになっちゃうんだもんね」
「そうだねえ……。時代の流れって怖いよね、わたしたちも大昔の人になっちゃうんだもん。今は貴重な若者でも、数十年後にはおばさん……」
悲しいぜ、と首を振ると、廊下のほうから女子の歓声が聞こえてきた。
みいと「うわあ……」と呟き、歪ませた顔を見合わせる。
そしてその顔のまま、「女子ってなんで朝から元気なんだろう」という言葉を同時に発した。
廊下から聞こえる女子の歓声は、
われら東高等学校第2学年4クラスの王子、小野寺 薫(おのでら かおる)様がお見えになる合図だ。