1年1組というクラスで
学力の底辺に辛うじてぶら下がりながら、
中学生として初めて迎えた夏休みと、1週間ほど前に別れを告げた。
再び、せめて底辺からは落ちぬよう必死に生きる。
底辺にもぶら下がっていられないとなると、恐らく一対一で勉強を叩き込まれる。
そんなことになろうものなら、わたしの頭は黒煙を噴出する。
「藤崎」
頬杖をつき、この数学の時間が早く終わらないだろうかと考えていると、
数学担当の黒眼鏡男性教師からご指名を受けた。
「すみません、今手が離せなくて……」
「そういうのいいから、ここ答えられるか?」
黒眼鏡男性教師は、銀色の棒でペチペチと黒板を叩く。
わたしが頭をフル回転させて黙っていると、式を左からゆっくり、その銀色の棒で示していった。
「あっ、わかった、マイナス6」
「惜しい、5な」
男性教師は、イコールの隣にさらりと−5と書いた。
「テストでは点、1割くらいくださいね」
「悪いがそれは難しい。今は10点やる」
「おっ。何点貯めるとなにが起こるんです?」
「100点で俺が怒る」
「えっ?」
「誤差1ごとに10点貯まるからな、誤差が計10になったところで個別指導だ」
「ちょっ、個別指導とか。大激怒じゃないですか」
先生正気ですか、とわたしが言うと、男性教師は「はいっ、授業続けまーす」と授業を再開しやがった。
机に突っ伏し、まずいまずいと聞こえない声で騒ぐ。
もし今度、十の位の数字を1つ間違えれば、即個別指導行きだ。
なぜ数学担当がこの男だったのだろうと思うと、
この瞬間に早泣き大会が行われたら優勝できるような気分になった。