「そうだ、昨日翔(しょう)ちゃんがさ」
昼食中、友達のみいが言った。
向かい合う形で座る彼女が放つ雰囲気から、翔ちゃんの自慢話が始まるのを悟る。
みいとは、去年――この学校に入学して間もない頃、
休み時間に2人で窓の外を眺めたことを機に仲よくなった。
今年も同じクラスだと知ったときは、2人で大袈裟なくらいに喜んだ。
彼女の身長は、158センチとわたしより10センチも高い。
一緒にいるのが少し恥ずかしいけど、それを告げたとき、みいはあたしもそうだと笑った。
君は平均的な身長なのだからいいじゃないかと思ったのを覚えている。
また、翔ちゃんというのは、みいの学校の壁を越えた彼氏だ。
長身で優しい上、顔もかっこいいらしい。
今まで何度か翔という名前らしい彼氏の話を聞いているが、わたしはなんとなく複雑な気持ちでそれを聞いている。
今は元彼という遠い存在になってしまった完璧男子と同じ名前だからだ。