「わたし、言ったよね。

あんたが帰ってくる頃には、あんたなんかと比較にならないくらい素敵な彼氏を捕まえて、あんたを振ってやるって」

わたしが言い終えて間もなく、「お待たせ」と薫くんの声が聞こえた。

そちらを振り向くと、小さく口を開けた薫くんが立っていた。

「ごめんね、薫くん。あの人、元彼なの」

「あっ、そうなんだ」

薫くんはわたしの言葉に頷くと、

自身の彼女の元彼に会ってしまったという状況に困ったのか、遠山 翔に会釈した。

わたしはぴょんと飛んで薫くんの隣につくと、彼の腕に抱きつくように腕を絡めた。

全力の笑顔で薫くんを見上げ、「帰ろっか」と言う。

そして遠山 翔へは、心の底から「ばーか」と放った。



その直後に自然と浮かんだ笑顔はきっと、

これからを考えてみても、

里香ズライフ史上最も悪いものだ。





ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜

おわり。