ゆうと別れ、自分を包む現実感を感じながら、たまには女の子らしいファッション雑誌でも見てみようかと考えた。
文房具コーナーを出てからレジのほうを見てみたが、すでにゆうの姿はなかった。
まあ里香としてはあの完璧な素敵男子を自慢したいところだろうけどね――。
先ほどのゆうの言葉を思い出し、「超能力者なのかな」という非常に気味の悪い独り言を呟いた。
ファッション雑誌が並ぶ辺りが近づくと、わたしは顔を上げ、辺りを見回した。
男性用がここならもう1つ先かな、と考える頭に、数年前の記憶が蘇った。
ドキンと心臓が痛み、体が熱くなると同時に一瞬痛んだ心臓が騒ぎ出す。
「カケル……?」
自分にもはっきりは聞こえないような微かな声で呟いた。
視線の先で、わたしをおちび拾って下さいのダンボール箱に放った遠山 翔に酷似した男が雑誌を立ち読みしていたのだ。
咄嗟に背筋を伸ばし、毅然とした態度を作った。
騒ぐ心臓を落ち着けると、わたしは大股で元彼に似た男のほうへ歩き出す。
彼の後ろを通るときに、記憶の中の後ろ姿と比較し、同時に自分との身長差を確認した。
本物じゃね、と心の中で呟き、女性向けの雑誌が並ぶほうへ曲がった。
先ほどの男が遠山 翔だと確信すると、落ち着かせたはずの心臓が再び騒ぎ出した。