「えっ、ゆうは今日なにしにきたの?」
「ボールペンのインクがなくなっちゃってさ。それを買いに」
ゆうは「赤と青って消費早いよね」と言って棚に並ぶボールペンのインクへ目をやった。
そして一瞬の迷いもなく赤と青、それぞれ2本のインクを手に取ると、こちらを見る。
「里香はなにしに? 本屋になんて絶対用なさそうなのに」
「否定できないからかな、すげえ悲しいや。わたしは、彼氏に付き合って」
わたしが素直に答えると、ゆうは驚いたように目を見開いた。
「里香、彼氏できたの?」
「うん」
「遠山くん以上の人なんて絶対見つからないって言ってたのに。いたんだ?」
わたしは「いたのよ いたのよ」と言うと、ゆうのそばへ寄った。
「すっごいかっこよくて、背も高くて、成績は常に学年トップ、そしてなにより、すっごく優しいの」
なんとなく小声で薫くんの自慢をすると、ゆうは「うわ、素敵男子だ」と笑った。
わたしは「素敵なんてもんじゃないよ」と笑い返す。
「わたしにはもったいないと思ってたんだけど……」
ゆうはわたしの言葉を遮り、「まさか」と言った。