「さっ、行こ行こ」と薫くんの部屋を出、急かすように手招きすると、

薫くんは慌てた様子で濃い茶色の大きめなバッグから洒落た財布を取り出し、ジーンズのポケットに入れた。


本屋までは、わたしが前を走った。

途中、自転車を漕ぐ速さを争うようなこともした。

そのおかげか、本屋にはかなり早く着いた。


自動ドアの内側には、もう何年も見ていない景色が広がっていた。

薫くんは「ちょっと行ってくるね。好きなとこ見てて」と残し、大股でどこかへ向かった。

わたしは文房具が売っている辺りへ向かった。

本なんて難しいものは見ていられない。