「……薫くん。その、無性に文字が読みたくなるっていうのも、未だかつて誰にも理解されてないでしょ」
愚問だとわかっていながら、確認のつもりで尋ねた。
しかし彼からの返答は想定外のもので、
「2人くらいわかってくれる人いたかな」というものだった。
「嘘っ……」
「まあ、世の中いろんな人がいるからね」と、わたしが言おうとしたことを薫くんは笑顔で言った。
正解も不正解も見つからず、「本当だよね」と返した。
「そうだ。おむすびの具が冷凍食品の焼き餃子って普通だよね?」
他人に理解されない好きなものということで思い出し、尋ねた。
「ああ……。べつに変ではないんじゃない? 日本では、餃子おかずにご飯食べるし」
本場でやったらちょっとまずいかもしれないけど、と薫くんは苦笑を続けた。
「だよね、日本では普通だよね。
わたしお弁当に、いつも具としての焼き餃子を白米で包んだ、餃子むすびを入れてるのね。そしたらさ、みんなよ、みーんな。
『えっ、なにそれえ?』
『おかしくなあい?』
『普通、おにぎりの具を餃子にしようと思わないよねえ』ってさ」
そこまで言う必要ないと思わないかいと共感を求めると、薫くんは「確かにそこまで変じゃないと思う」と頷いてくれた。
やはり薫くんとは気が合うなと思いながら、「だよねだよね」と自分でも頷いた。