「えっ、開いてみてもいい?」

「もちろん。ガラッガラだけど」

「失礼しやす」

確かにガランとした本棚の前で一礼した。

そっと手を伸ばし、半分に分かれて開くのだとわかると、振り返って

「自動ドア風? 手動ドア風?」と尋ねた。

「手動ドア風」と少し笑いが混じる声で返ってきたことを確認し、本棚をそっと手前に引いた。


スムーズに開いた本棚は、わたしを囲むように左右それぞれ90度開いた。


「すごーい……。これ作っちゃったの?」

まじかまじかと騒ぎながら本棚を眺めるわたしに、薫くんは「材料は木とチョウツガイっていうのだけだから。造りも単純だし」と笑った。

「そのチョウツガイとかいうブツは……?」

「本みたいに動くんだけど……」

薫くんは「ちょっと待って」と言うと、ベッドから立ち上がり、机の中を漁った。

「あった。残ったの入れておいたの」

こういうの見たことない?と薫くんはチョウツガイと言うものをわたしに渡した。

受け取ったそれは、見たことがないわけではないものだった。

「昆虫の蝶に番号の番って書くの。

確か……その形を、とまってる雄の蝶と雌の蝶に見立てたのが蝶番って名前の由来とかそうじゃないとか」

「ふうん……」

なんでも知ってるんだね、と言って薫くんの手に蝶番を返した。