思い出したように「適当に座って」と言われ、わたしは特になにも考えずテーブルの前に座った。

薫くんはベッドに座る。

彼を見るという意味では初めての角度で、少しドキドキした。

学校では王子様と呼ばれている薫くんのかっこよさを改めて見せつけられた。

目を逸らすことを目的に後ろを振り向くと、でかい本棚が1つ増えていることに気がついた。


「えっ、薫くん」

「ん?」

「本棚、増やしたの?」

「ああ、うん」

「これまた大きなものを……」

こんなものどこで買ったのだと尋ねると、薫くんは

「近くの家具屋に気に入ったのがなかったから作っちゃった」と笑った。

王子 今なんとおっしゃいました、と心の中で聞き返す。

「作った? 作った、これを?」

わたしは驚きを隠すこともなく立ち上がり、でかいその本棚をまじまじと眺めた。

「まだ1冊も入ってないけど、それ開くようにしたからその3倍入るよ」

「ええ……?」

この状態で見えている一面だけで

辞書のような厚さのあるものでも100冊近く入りそうなのに、その収納力がさらに3倍ありますか。

平均的な厚さの本ならどれだけ入るのだろうと素朴な疑問が浮かんだ。