弟に負けを認めさせてから彼と別れ、その後は1人でのんびりと漕いだ。

時々自転車が意思表示をしてこちらが操られることもあったが、無事に服屋の近くまで辿り着いた。

ここまでくれば、小野寺家はもう遠くない。

薫くんに会えるのが楽しみになって、ペダルを踏みながら再び立ち上がった。

自転車のスピードを少しずつ上げていく。

やがて自転車の速度がわたしの中でピークに近くなり、下り坂でさらに加速したところでブレーキを握った。

自転車がキーキーと甲高い音で鳴く。


自転車が完全に停止するのには時間が掛かり、小野寺家の前からは少し離れた場所で止まった。

サドルに座った状態でぎりぎり地面に触れるつま先を使って少し後ろへ下がる。

小野寺家の前にまで戻ると、囂しい音に反応してか、玄関の前に薫くんがいた。

「どうも」と会釈すると、同じように「どうも」と返ってきた。