久々のツインテールで部屋のドアを開けると、なにかに当たったような感覚と音がした。

「いーった。激痛、最低、嫌がらせ」

騒がしい男の声が聞こえ、今日も部屋の前に弟がいたことを知る。


「うるさいなあ。前も言ったけど、あんたが前にいるからでしょ?」

「いやいや。俺だって前も言ったけど、里香が がんってドア開けなけりゃ俺がいたってぶつかんねえんだわ」

「わたしがどれだけ丁寧に開けようと、反対に雑に勢いよく開けようと、そのときにあんたが前にいたらぶつかるでしょ?」

「いや」と言い訳をしようとした弟の声を、「よって」と遮る。

「あなたがわたしの部屋の前にいるのが悪い」

わかったわね、と言って部屋を出、階段の取り合いが始まって気がついた。

弟の足元にいるジンベエザメと目が合ったのだ。

「あんた、わたしが買ってあげた靴下気に入ってるんじゃない」

「べつに気に入ってねえよ」

「あんた、今日友達の家に行くんでしょ?」

「だったらなにし」

「友達の家に行くのに履くだなんて、かなり気に入ってないとしないわよ?」

「うっせえなあ。洗濯のサイクルでこれを履く羽目になっちまったんだよ」

「洗濯リサイクルってなに?」

「サイクルな。洗濯のサイクル」

の、を強調して言うと、弟は階段を下りようとした。

そうはさせまいと反射神経が働き、ぎりぎりで階段を下りるタイミングを奪い取った。